私はかつて、自他共に認める汚部屋の住人でしたが、今では必要最小限の物で暮らすミニマリストとして生活しています。この大きな転換のきっかけとなったのは、ゴミ屋敷の象徴だった巨大な冷蔵庫を手放したことでした。当時の私の冷蔵庫は、特売で買い込んだ食材や、いつか使うつもりだった調味料で溢れ返り、その大半が賞味期限切れのゴミとなっていました。物を溜め込むことは安心感を得るための手段でしたが、実際には管理しきれない物に支配され、心身ともに疲弊していたのです。ある日、故障を機に冷蔵庫の中身を全て捨て、冷蔵庫そのものも処分するという極端な断捨離を敢行しました。それは私にとって、自分の「食」の習慣を根底から見直す実験でもありました。冷蔵庫がない生活を始めて気づいたのは、私がいかに「いつか食べる」という幻想のために空間とエネルギーを浪費していたかということでした。毎日、その日に食べる分だけの新鮮な食材を買い、使い切る。保存という概念を捨てることで、私は食べ物の命を一番美味しい状態でいただくという、当たり前の幸せを手に入れました。ゴミ屋敷時代の、腐敗を恐れながら冷蔵庫の奥を覗き込んでいたあの不安感は、もうどこにもありません。現在の私のキッチンには、小さな保冷ボックスがあるだけですが、そこには厳選された旬の味覚だけが並んでいます。冷蔵庫という「溜め込みの装置」を排除したことで、私の思考は驚くほどクリアになり、無駄な買い物をすることもなくなりました。汚部屋を脱出したいと考えている人に私が伝えたいのは、冷蔵庫の中身を半分に減らすだけで、人生のストレスの半分が消えるということです。冷蔵庫は、私たちの欲の深さを映し出す鏡でもあります。それを空にし、あるいは自分に合ったサイズに見直すことは、自分の心と体の調和を取り戻すための、最も効果的なアプローチです。食を大切にすることは、今この瞬間を大切にすること。断捨離を通じて手に入れた、清々しいキッチンと冴え渡る感性は、私の人生における最高の財産となりました。
冷蔵庫の断捨離が教えてくれた「食」と「生」の調和