ゴミ屋敷化した空き家が相続によって引き継がれる場合、問題は一層複雑になります。単なる片付けや処分に留まらず、法的な側面や関係者間の感情的な側面が絡み合い、解決を困難にすることが少なくありません。まず、相続人が複数いる場合、意見の対立が生じやすいという問題があります。空き家をどうするのか、売却するのか、維持するのか、片付け費用を誰が負担するのかなど、相続人全員の合意形成が非常に難しいケースが多々あります。特に、親族関係が疎遠であったり、元々関係が良好でなかったりすると、話し合いが進まず、問題が長期化することになります。また、相続人が空き家がゴミ屋敷であることを認識していない、あるいは見て見ぬふりをしているという状況も起こりえます。遠方に住んでいる場合や、生前の親との関係が複雑だった場合など、問題と向き合うことを避けてしまう心理が働くことがあります。しかし、相続が発生すれば、その空き家は相続人全員の共有財産となり、管理責任も生じます。ゴミ屋敷化した空き家を放置することは、相続放棄をしない限り、相続人としての義務を怠ることになります。次に、相続放棄という選択肢です。もし空き家に資産価値がなく、片付け費用や固定資産税などの負担が大きすぎる場合、相続放棄を検討することも可能です。しかし、相続放棄は他の全ての財産(預貯金など)も放棄することになるため、慎重な判断が必要です。また、相続放棄の期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内と定められており、この期間内にゴミ屋敷の状況を把握し、判断を下すことは容易ではありません。さらに、空き家がゴミ屋敷であることで、遺産分割協議が難航することも珍しくありません。不動産の評価が困難であることや、片付け費用を誰がどのくらい負担するのかで意見がまとまらないなど、相続人間の争いの種となることがあります。このような状況では、弁護士や司法書士といった専門家を交えて、客観的な視点から話し合いを進めることが解決への近道となります。相続によってゴミ屋敷化した空き家を引き継ぐことは、心身ともに大きな負担を伴います。しかし、問題を放置すればするほど、より複雑化し、解決が困難になることを理解し、早めに専門家の力を借りて適切な対応を取ることが求められます。