特殊清掃やゴミ屋敷の現場を専門とする私たちが目にする寝床の状況は、一般の方々が想像する以上に壮絶なものです。ある現場では、ベッドの形さえ判別できないほどに衣類やゴミが積み上がり、住人はその山の上に穴を掘るようにして「巣」を作って生活していました。その穴の底には、何年も洗われていないシーツがあり、そこからはカビと強烈なアンモニア臭が立ち上っていました。また別の現場では、エアコンが壊れた状態で、何千もの空のペットボトルに囲まれて眠る高齢者の姿がありました。彼の寝床のすぐ横には、腐敗した食品の袋が散乱し、そこから這い出した害虫が彼の寝具を自由に徘徊していました。これらの現場に共通しているのは、住人がこの異常な環境に完全に適応してしまい、不快感を感じなくなっているという点です。人間には適応能力がありますが、ゴミ屋敷という極限環境においては、それがマイナスに作用してしまいます。本来なら一刻も早く逃げ出すべき不衛生な場所が、唯一の「安心できる場所」にすり替わっているのです。清掃員として私たちが最初に行うのは、この歪んだ安心感を、物理的に解体することです。寝床周辺のゴミを一気に撤去し、特殊な薬剤で消臭と除菌を施すと、隠されていた本当の部屋の姿が現れます。そこには、長年日光を浴びていないために変色した床や、湿気で腐りかけた壁があります。住人の方は、その現実を突きつけられたとき、最初は激しく混乱し、時には怒りを見せることもあります。しかし、作業が進み、清潔な寝具が設置されたとき、彼らは共通して深い安堵の表情を見せます。清掃員が目撃するのは、ゴミの山だけではありません。そのゴミの下に埋もれていた、人間の再生への微かな希望の兆しです。ゴミ屋敷という名の巣を壊し、人間としての真の休息の場所を再建すること。それが、私たちの仕事の真髄であり、最もやりがいを感じる瞬間でもあります。不衛生な寝床との決別は、過酷な闘いですが、その先にしか真の救いはないのです。
清掃員が目撃した衝撃的なゴミ屋敷の就寝環境