私の家の隣は、ゴミ屋敷です。その事実が、私の日常から平穏を奪い去りました。季節を問わず、風向きによっては、窓を固く閉め切っていても、どこからともなく酸っぱいような、物が腐ったような、不快な臭いが侵入してきます。特に、夏の蒸し暑い日は地獄です。窓を開けて新鮮な空気を取り入れたいのに、ドアを開けた瞬間に流れ込んでくるのは、吐き気を催すほどの悪臭。洗濯物を外に干すこともできません。臭いが移ってしまうのではないかと考えると、怖くてベランダに出ることすら躊躇われます。友人や親戚を家に招くことも、いつしかなくなりました。「なんだかこの辺、臭くない?」と言われてしまうのが怖くて、人付き合いまで消極的になってしまったのです。私の生活空間は、目に見えない悪臭によって、確実に蝕まれていました。もちろん、黙って耐えていたわけではありません。町内会を通じて、やんわりと注意を促してもらったこともあります。市の環境課に相談の電話も入れました。しかし、状況が劇的に改善することはありませんでした。「個人の問題」という高い壁の前に、何度も無力感を味わいました。一番辛いのは、この悪臭が、単なる不快感だけでなく、私の健康にまで影響を及ぼし始めていることです。原因不明の頭痛や吐き気に悩まされるようになり、夜もぐっすり眠れません。臭いを気にしすぎるあまり、精神的に追い詰められ、家にいること自体がストレスになってしまいました。自分の家が、安らげる場所ではなくなってしまったのです。この悪臭との戦いは、終わりが見えません。物理的な被害だけでなく、人の心と体の健康をも静かに、しかし確実に破壊していく。ゴミ屋敷の悪臭問題の深刻さを、私は今、身をもって体験している最中です。ただ、安心して窓を開け、深呼吸できる。そんな当たり前の日常を、一日でも早く取り戻したい。それが、今の私の唯一の願いです。