ある日突然自宅の天井からポタポタと水が滴り落ちてきた。壁紙には茶色いシミが広がり部屋にはカビ臭い匂いが立ち込める。これは集合住宅であるアパートやマンションで起こりうる悪夢のようなシナリオです。そしてその原因をたどっていくと上の階の部屋がゴミ屋敷だったというケースは決して珍しいことではありません。階下の住民にとってこの被害はまさに青天の霹靂です。自分の部屋が水浸しになり大切な家具や家電がダメになってしまう。壁紙や天井の張り替えなど修繕にも多大な費用と時間がかかります。この場合その損害賠償や修繕費用は一体誰がどのように責任を負うのでしょうか。まず原則として水漏れの原因を作った「上の階の住人(賃借人)」が階下の住民に対して損害賠償責任を負います。ゴミで排水口を詰まらせたり不適切な水の使用で水を溢れさせたりしたことは、部屋の使用者としての注意義務に違反する明らかな過失だからです。しかし問題はゴミ屋敷の住人の多くが経済的に困窮しており高額な賠償金を支払う能力がないことです。ここで次に責任が問われるのが建物の所有者である「大家さん(賃貸人)」です。大家さんには入居者が安全に生活できる環境を維持する義務があります。もし大家さんが上の階がゴミ屋敷であることを認識していながらそれを放置し、何らの対策も講じていなかった場合「管理者としての責任」を問われ、階下の住民から損害賠償を請求される可能性があります。また多くの人が加入している「個人賠償責任保険」や大家さんが加入している「施設賠償責任保険」などがこの種のトラブルをカバーできる場合もありますが、ゴミ屋敷のような著しい注意義務違反が原因の場合は保険金が支払われないケースもあります。階下への水漏れはゴミ屋敷問題がもはや個人の問題ではなく建物全体を巻き込む深刻な法的トラブルへと発展する典型的なパターンなのです。